六田知弘

MUDA TOMOHIRO >> Topics 2021

トピックス

写真家・六田知弘の近況 2024

展覧会や出版物、イベントの告知や六田知弘の近況報告を随時掲載していきます(毎週金曜日更新)。

過去のアーカイブ

2024.02.23 2月のフクロウ
2月のフクロウ

2週間ほど前の温かい夜のこと。
まだ駆け出しのカメラマンだった頃にお世話になった先輩を偲ぶ会からの帰り道、高幡不動の駅からお不動さんの裏山に沿った長い坂道を上りきったところで、ふと見上げると一本の木になぜだかライトがあたっていて、晴れた夜空を背景に電磁波を絵に描いたような(?)不思議な姿が目にはいりました。
思わずスマホをポケットから取り出してシャッターを4〜5回押したうちの一枚がこの写真です。
こんな暗いのによく写るものだと画面を見て感心しているうちに気づいたのですが、写真を撮っている間になにやらその木の向こうの裏山から聞こえていたような。そう思って聞き耳を立てていると、フフ、フーフ フーフと結構大きな、ゆっくりとした鳴き声が。フクロウでした。
10年くらい前まではお風呂に入っていた時などにフクロウやコノハズクの声が窓の外から聞こえてくる事が時々あったのですが、本当に久しぶりです。
もう一度鳴かないかと木の向こうの裏山の方にしばらく耳を立てていたのですが、それっきり。
フクロウも向こうのほうに行ってしまったのでしょうか。(六田知弘)

 

Back to Top

2024.02.16 唐招提寺の釘隠
唐招提寺の釘隠

暖かい日の午後、まさに春雨のような静かな雨に濡れて久しぶりに唐招提寺を訪れました。
子供の頃から大好きな千手観音を仰ぎ見ていると半世紀も経っているはずなのに時の経過などなかったかように、あの時と同じ自分がここにいて、この位置からこの観音さまを見上げている、そんな錯覚を覚えてしまいました。
本当に時間は過ぎていったのでしょうか? こんなふうに感じる事は時々あるのですが、、、。
時間などは一直線に流れているのではないのじゃないか、川の流れのように、うねりながら、絡みながら流れているのじゃないか、そう中学からの下校時に葛城川の橋の上から水の流れを見ながら考えたときのことを、ふと思い出しました。

さて、写真はその唐招提寺金堂の大きな釘隠し。創建当時のものではなく何代目かのものなのでしょうが、古い木材に差し込まれた金属の光沢とその肉饅のような形を見ていると思わず手で触ってみたくなってしまいました。釘隠しの周りの木材の修理痕も好ましい。(六田知弘)

 

Back to Top

2024.02.09 古い骨格標本
古い骨格標本

東京駅の丸の内側にあるKITTEビルの2階に東京大学の動植物標本を集めて展示する施設があり、近くに行った時にはよく立ち寄ります。
そのガラス貼りの展示ケースの中に並べられた戦前に作られたと思われる古い、もう色が抜けたり、シミがついたり、破損したりしているネズミやシギやサメやカエル、コウモリ、羊歯類やオニバスなどの標本を覗いているとついつい時間を忘れて見入ってしまいます。
ああ、これを撮りたい!そういう欲求がムズムズと湧いてきます。
台湾国立博物館にも日本統治の頃に集められた数多くの古い標本があって、以前撮影の交渉をした事があるのですが、様々な事情で立ち消えになってしまいました。
何でこんなものにそそられるのかわかりませんが、とにかくめちゃめちゃ撮りたい被写体です。(六田知弘)

 

Back to Top

2024.02.02 床面
床面

いつも行く鍼治療院がある建物の玄関先の床面に面白い文様を見つけてスマホで撮りました。
コンクリートを塗って、まだ固まりきらないうちに建築資材なんかを置いてできた型なのか、あるいはコンクリートの袋の紙なんかを雨よけのために被せたためにできてしまった痕なのでしょうか。
見ようによっては、キュビズムの絵画作品にも見えます。

二十数年間撮り続けている「壁」もそうですが、人間の行為によるものには違いないのですが、意図せずにできてしまった形の中に面白いものが秘められている。
それに時間が堆積してその秘密めいたものがより濃厚になっていく。
そんなものに私はなぜ惹かれるのか、あまりよくわからないのですが、、、。(六田知弘)

 

Back to Top

2024.01.26 オウムガイ
オウムガイ

能登半島地震では地盤の隆起が所によっては4m近くも生じて、海岸線が100m以上も遠のいたり、漁港の海底が露出して漁船が出せなくなったりして地元の漁師さんが困っているという報道がありました。

宇宙に地球が誕生して46億年。地殻がある程度固まって陸地ができた後にも常に地盤は変動し続けて今があるのですが、今回はその変化の一端をリアルタイムで見て、あらためてその変化の中で我々が、そしてすべてのものが、今、ここに「存在」しているということの不思議を思ってしまいました。

写真はオウムガイの化石ですが、1億年以上前に実際に生きて海中を漂うように泳いでいた時があったわけですが、それが死んで土に埋まり、やがて化石化して、地殻変動とともに陸上に持ち上げられた。それを誰かが発掘して、多くの人の手を経て今、私の手のひらの上にのっている。
そしてこれからも様々な形に変化し続け、やがて分子や原子まで分解されて、また様々な現象世界の一部となっていくわけですが、、。

そうした変化し続ける「存在」の一瞬の現れをカメラで写していきたいと思っています

と、被災地から遠く離れた所にいる私は、ずいぶんのんびりとしたことを書いてしまいました。
家族や知人をなくし、家を無くし、仕事を無くした今の被災地の人たちからするとそんな御託などどうでもよく、生きのこるための医療や食料や衣料や水や安心できる寝場所が必要なんだと、どやしつけられても仕方がありません。(六田知弘)

 

Back to Top

2024.01.19 デジャヴ
デジャヴ

奈良博所蔵品の写真集の撮影もいよいよ大詰め。来年の開館130年記念に合わせて全部で130点を掲載する予定ですが、残すところあと6点です。
今回は国宝の「薬師如来坐像」から始まり、重文の「春日龍珠箱」、「両界曼荼羅、倶利伽羅龍剣ニ童子像」などが続き、最後はこれまた国宝の絵画「十一面観音像」でした。
いやあ、今年最初の本格的な文化財の撮影であったせいか、かなり入り込んで撮っていたようで、龍の絵を撮っている時にはその絵にシンクロするかのように自分の内側に潜んでいた龍が目覚めて、珠を手に、ゆっくりとうねりながら動き出したような感覚を覚えました。
そして最後の「十一面観音像」を撮っているときなどは、激しいデジャヴ(既視感)で、それが撮影を終えた後も半日ほども続いていました。デジャヴは昔から時々あったのですが、ほとんどが5分くらいでおさまるのですが、今回はあまりにも強烈で、長かった。

なんで今、こうなったのか分からないのですが、龍や十一面観音に刺激されてか、私の中にあって長い間潜んでいた何かが目覚めて、グリっ、グリっと回転し始めたような気がします。

さてこれからどう変化していくのか。
あがらう事なく、すべてを天に委ねようと思います。(六田知弘)

 

Back to Top

2024.01.12 恐竜の卵
恐竜の卵

台湾の地方都市の雑貨店の隅っこで見つけた恐竜の卵の化石です。
なんでこんなものがここにあるのか分からなかったのですが、安価だったので即購入。別の露天で買った25センチもあるブラジル産の水晶と二つ、思わぬところで思わぬものをゲットしてルンルン気分で台北に戻った事を覚えています。

手にその卵を握っていると、1億年も前に地球上を跋扈して、惑星の衝突の影響で絶滅してしまったという動物の、温もりのようなものを感じてしまうのはなぜなのでしょう。遥かな時間を超えて、どこか私にもこの卵と繋がっているものがあるように思えてなりません。(六田知弘)

 

Back to Top

2024.01.05 蝶の群れ
蝶の群れ

大晦日から年明けにかけての4日間はパソコンの前に座って10以上の外付けハードディスクになんやかやと溜まりに溜まった写真画像の整理をしていました。

ある仏像の画像を検索していた時に、ずらっと並んだ同じ番号の画像の中に一瞬目に留まったものがあり、それを開いてみてハッとしました。
奄美大島の海岸沿いの林の中で越冬するリュウキュウアサギマダラの群れです。
この写真を6〜7年ぶりに見てインパクトを受けたのは能登の大地震やそれに続く羽田空港での事故などがあって神経が少しばかり過敏になっていたせいかもわかりません。
我々をつつむ大いなる自然が放つ波動におののき、そして癒された年明けです。

皆さんにとって良い年でありますように。(六田知弘)

 

Back to Top

Back to Top