六田知弘

MUDA TOMOHIRO >> Topics 2019

トピックス

写真家・六田知弘の近況 2019

展覧会や出版物、イベントの告知や六田知弘の近況報告を随時掲載していきます(毎週金曜日更新)。

過去のアーカイブ

2019.01.18
顔

奈良の実家の仏壇の横に私のご先祖様の写真が額に入れられかざってあります。私は月に一度、老人施設に入っている母に会いに行く時に仏壇にもお参りするのですが、いつも右目の端に見えるその額が気になります。一枚の大きな額の中には生前から知っている父や祖父、祖母などと一緒に曽祖父母、そしてその両親の写真などが10枚ほど入っています。そのなかでも特に私を惹き付けるのは、私から数えて四代前、つまり私の祖父の祖父である六田平七という人の顔です。なんといい顔をした人でしょう。
六田平七という人は、元々は「曙」というシコ名の関取だったそうですが、引退後、奈良県の御所で「あけぼの」という饅頭屋をはじめた人です。明治18年創業ですから今から120年ほど前になります。いまでも「あけぼ乃」は御所の駅前にあって、伝統的なものだけではなく様々な新しい工夫を凝らしたお饅頭も提供しています。
それはともあれ、平七さんの顔です。写真を見ていると、その気の充実した艶のある低い声が聞こえてくるようです。こんな顔をした人には滅多にお目にかかれないのではないでしょうか。もし同時代に生きていたならこの人のポートレートを撮りたかった。そして自分がもし生まれ変わることができるならこういう顔の人になりたい。そんな雑念を持ちながら仏壇に手を合わせています。(六田知弘)

 

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2019.01.11 天の青
天の青

ここのところ晴天の日が続いているので、高幡不動尊の裏山の頂上辺りから真っ白な富士山が連日のように見ることができます。
見上げると、紺碧の空に白い冬の雲が東から西に流れていきます。葉を落とした木々の枝が銀色に光りながら風に揺れています。それにしても何という青の深さでしょう。宇宙空間の色はこんな青をさらに濃くしたものかもしれません。今、自分がいる地球も宇宙の中に浮かんでいるのだという事を、そして自分という存在も宇宙の現れのひとつなのだと、こんな空を見ていると納得させられるような気がしてきます。
昨年は中国の北宋時代の汝窯というやきものをいくつも撮影しました。その汝窯の色を表す「天青」というのは、こういうのではと、ふと思いました。といってもこの色合いが汝窯のものと同じだと言っているのではなく、(一口に汝窯といっても一点一点こんなにも違うのかと思うほど多様な色合いです。)汝窯青磁だけが放つ独特の波長と近いものをこの空も発しているように感じたのです。 「天青」という言葉は明時代の書物で汝窯の色を表した「雨過天晴」からきているようですが、わたしは、雨後の空の薄青い色というより、雨後の雲の割れ目からのぞく深い青のことだとかねてから思っています。(あまり言う人はいないですが、汝窯青磁の器体それ自体というより、密かに施された沈線に溜まった釉溜まりの色こそ私が思う「天青色」なのです。)宇宙空間と同じような波長を持った青。「天の青」すなわち「宇宙の青」「Blue of the universe」は汝窯青磁だけが持つ、宇宙と繋がった青だと思うのです。

今年でこの トピックスも16年目に突入です。文章が大の苦手な私です。毎週、結構苦しみながら書いています。今年もどうぞよろしくお付き合いいただけますように。(六田知弘)

 

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